エンジニア の 独り言

マルチケーブルの周波数特性

全国のホールでは、客席の後方にある副調整室とステージの両袖の間は
マルチ・ケーブルで結ばれたコネクター・パネルが設置されているのが
一般的です。
PAをやったことがある人なら、薄々感じていることではあるのですが、会館の
配線は音が鈍って聞こえる事を経験しているはずです。
今回、あるホールの配線をチェックするついでに、ステージ袖にある入力と
出力のコネクターを短いケーブルで結び、副調整室で副調整室−ステージ袖
を往復させた回線の周波数を測定してみました。



直線距離では50mもないような場合でも、かなり遠回りさせて配線される事が
多いのは想像に難くありませんが、こちらの予想を大幅に上回る周波数特性
の悪化が観測されました。
マルチケーブルは一般的に、細い導体が使われることが多く、なおかつ仕上
がり直径を、可能な限り細くしなければいけないため、芯線同士やシールド
との間隔が狭まり、線間容量が増える傾向があります。
この線間容量はハイカットフィルターとして働き、高音が減衰することが理論的
に考えられていましたが、実際にどのくらいの周波数特性になっているかを
測定したデータは発表されていなかったようです。
普通のマイク・ケーブルも測定してみましたが、数十mではほぼフラットでした
ので、マルチ・ケーブルの場合は線間容量などの問題が顕著になるのかもしれ
ません。
最近はオール・デジタル・ミキサーを採用し、アナログのマルチ・ケーブルの
代わりに、デジタル・ケーブルで音声信号をやりとりするケースもありますが、
まだまだ一般的ではありませんので、アナログのマルチ・ケーブルの場合は
こういった周波数特性の悪化を系賛意入れる必要があるかもしれません。
以前、測定したシステムでは、ミキシング・コンソール自体の周波数特性が
ひどく、8kHz以上のレスポンスが急激に減衰していたこともありましたので、
高音域の抜けが悪いといった症状が感じられた場合は、一度測定して、何が
悪化の原因かをチェックする必要があるように思われます。