エンジニア の 独り言

ホーンのデッドニング

ホーンのデッドニングは金属製のマルチ・セルラー・ホーン、セクトラル・ホーンでは
最も重要なファクターで、そのために多大な創意工夫が開発当初からなされていま
した。しかし、その多くが粘土のような物をホーンの外側に分厚いコーティングのよう
に貼り付けたりしただけで、理想とはかけ離れていました。

オーディオマニアの方々には砂を入れた袋でホーンをサンドイッチしたり、ホーンを型
に入れ、隙間に溶解した鉛を流し込んで固めるなど、物量作戦でホーン鳴きを克服
しようと、涙ぐましい努力をされてきた方もいらっしゃるようです。
しかし、本来ホーン鳴きを抑えるために付けられている上面と下面をつなぐフィンの
ような部分の振動が、逆に気になってくるなど、問題はつきないようです。

従って、金属の特性を利用しない方法では効果的で、尚かつ実用的な解決にはなり
ません。

一部のマニアに人気のあった音響レンズも、指ではじいてみれば、すぐ分かるように
共振がひどく、その共振によって楽音には有害な雑音が大量に発生してしまうこと
は、明白です。

また、一時流行った木製のホーンも共振は少ないのですが、素材を音が伝わる速度
が遅く、ドライバー本体の振動を素早く運動エネルギーから熱に変え、振動を抑える
には少し問題があります。木製ホーンだと音がぼやけるという評価をされる方も多い
ようですが、このような点にその原因があるのかもしれません。

更にグラス・ファイバーで強化したプラスティック(FRP)製のホーンも、レジンなどを
材料に加えることによって共振を抑えることは可能ですが、その分重量が増えてしま
うというデメリットが生じてしまいますし、質量で振動を抑え込むというのはスマートな
解決方法とはほど遠い手法です。



上の画像はAH820ですが、このホーンでは、開口部が平面になっており、バッフル
や木枠に固定しやすくなっていますが、取り付け面に大切な秘密が隠されています。



開口部の前面は平面になっていますが、後面は中央が少し盛り上がっており、バッフル
や木枠にガッシリ固定しますと、この部分を押しつける圧力がホーンとバッフルや木枠の
両方にテンションとしてかかり、叩いてみても、まるで岩石を叩いているような音しかせず
共振の問題を見事に解決しています。
また、金属という材質の性質上、固体伝送のスピード(音速)が速いため、ドライバー
自体の振動も直ぐ取り付けたバッフルなどに伝わり、熱エネルギーに変換されてしまい
ますので、ホーン臭さは微塵も感じられない設計になっています。

実際の音を音声ファイルで御確認下さい。