サウンド&レコーディング・マガジン
1992年1月号

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1991年10月11日午後6時頃、突然クレア・ブラザーズのマイク・ウォルフ氏から電話が
かかってきました。
「今、ポール・サイモンのツアーで日本に来ているんだけど、明日のコンサートに来ないか。」
翌日は仕事の予定があったのですが、当然全てキャンセルして東京ドームへ向かいました。

● マイケル・ジャクソンのコンサートから2年ぶりの東京ドームだと思いますが、今回はミキシ
ングも担当されるんですね。

マイク・ウォルフ(以下) まあ、そうですが、私の担当はパーカッションだけで、おもなミキ
シングはポール・サイモンのツァーをずっと担当しているディヴィット・モーガンさんです。

● PM3000の方を担当するんですね?

 そうです。パーカッションだけで32チャンネルも使っているので、デイヴィットだけでは
コントロールしきれませんからね。
(本番では8プログラムのシーン・ミュートをフルに活かして使用していないチャンネルを
 ミュートして音が濁るのを防いでいました。)

● モーガンさんはポール・サイモンのツアーのミキシングをして長いようですが、いつも
心がけているようなことはありますか?

ディヴィット・モーガン(以下) オーディエンスには60〜70年代からのファンの人達も
多いので、彼らがレコードで聴いていたサウンドを再現するようにしています。

● エフェクターはどのように使っているのですか?

 エフェクターはコンプレッサーとリバーブ程度で自然なサウンドになるようにしています。

● ノイズ・ゲートも使っているようですが...

 ノイズ・ゲートはリチャード・ティーの弾くローズ(エレクトリック・ピアノ)のノイズをカット
したり、スティーヴ・ガッドのタムをゲートするほかに、ミンゴの叩くソルドゥにもかけています。
ソルドゥは叩いた後すぐにミュートするのが普通ですが、本番の時には確実にミュートでき
ないことが多いので、ノイズ・ゲートが必要なわけです。パーカッションに関しても基本的に
リバーブだけで、リミッターもノイズ・ゲートも使わないでストレートな音作りにしています。

● パーカッションで2本のマイクがパラになっているものがあるようですが、これはなぜ
ですか?

 それはティンバレス等でやっているマイク・セッティングですが、1本のマイクでカヴァー
しようとすると十分な明瞭度が得られないので、2本のマイクを交差させてセッティングし
打面にできるだけ接近させています。これによって回り込みによる位相の乱れを防げます。

● パーカッションはマイクと一緒にミキシングしていますが、ひとりでミキシングするのと
比べてデメリットはありませんか?

 いいえ、そのようなことはありません。要はふたりが同じ音を聴いているかどうかだと思い
ます。


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