112台でした。使用されていた専用プロセッサーは、3年半前から開発が進められマイケル ジャクソンのツアーでは試作段階のものが使用されていた Coherent Transfer System (CTS) と呼ばれる新製品で、位相と時間軸をアナログ回路で補正しています。今回使用されたCTS は、過去1年間ロバート・プラント、スティング、ポール・サイモン、デビー・ギブソン、ボブ・ ディラン等のツアーでチェックされ最終的な仕様が決定された完成品バージョンとのことです。 性能面では、リミッターと出力トランスを通した状態で121dB以上のダイナミック・レンジと 0.003%以下の歪率をクリアしており、周波数特性も100kHzまでのびているなどデジタル・ プロセッサーを上回っているため、クレア・ブラザーズも現時点ではデジタル化する予定は ないとのことです。CTSの特徴は理想的なリミッターにあり、保護回路用に開発されたVCAが 採用されています。このVCAは増幅機能は持たずアッテネートするだけで済むため、 リミッターとして良好な性能が得られているそうです。なお、このCTSは発熱量が桁違いに 大きいためファンが取り付けられており、リハーサルや本番中に排気口に手を近づけると パワー・アンプ並の熱風が吹き出していました。 今回のミキシング・コンソールはマイケル・ジャクソンの時に使用されたクレアのカスタム・ ミキサーではなく、このところ日本でも評判になっているギャンブルのシリーズEXとヤマハの PM3000-40が使用されました。ギャンブルのミキサーは56チャンネルでありながら非常に コンパクトにまとめられており、AUXは8系統、グループも8系統ですが、両方ともステレオに なってるため、実質的にはそれぞれ16系統と、最近のコンサートSRの要求に対応しています。 また、トータルのイコライジングにはT.C.エレクトロニックのTC1128がロング・スローとノーマル のS-4に対して2チャンネルずつ合計4台使用されており、それが1台のプログラマーで コントロールされていました。このイコライザーはステージ・モニターの方にも使用されており こちらの方は30台のTC1128が1台のプログラマーでコントロールされていました。 ![]() モニター・ミキサーはハリソンの32チャンネルが2台と、サウンドクラフトの200Bが2台使用され ており、モニター・スピーカーはお馴染みの12AMでした。 ![]() |
ほとんど踊りっぱなしという状態でした。彼の前にドラム・パッドがあれば間違いなく彼は5人目 のパーカッション奏者になったでしょう。本番中の音圧は、彼の言ったとおりクラークテクニック のスペアナDN60で監視する限りでは110dBSPLを超えることはほとんどありませんでしたが、 ピークはしばしば120dBSPLまで達しているようなシャープなサウンドでした。マイクとデイヴィット は、本番中しばしばCTSのインジケーターを見て、ときどきゲインとスレッショルドを調整していま した。CTSのリミッターは高音域のみにかかるような状態で、低音域、中音域は見ていた限り では1回もありませんでした。高音域のリミッターによって、耳につくような音が巧妙にカットされ ていたのかもしれません。ウェンデル・ジュニアの音は40Hzを中心に1オクターブ程度のピーク を持った分厚い感じのサウンドでした。全体的なサウンドとしては、70年代のアメリカのレコー ディングに良く聴かれるやや膨らんだ感じの低音に、明瞭度の高い中音と高音がほどよい バランスでした。 |